2009年4月27日月曜日

kizasi.jp

必ずしも新しい事例ではないが、日常と深く関わる事例としてkizasi.jpを挙げる。

kizasi.jp
http://kizasi.jp/

kizasi.jpは、株式会社きざしカンパニー(2007年に株式会社シーエーシーが設立)が運営する、ブログ記事の集約・解析サービス。2005年に正式運用が始まった。



従来の新聞社等による報道は「新聞社が重要と判断した情報」を伝えるものであり、読者は「選択された情報」を受動的に受け容れるしかない。ある情報が重要かどうか(速報で出るか、トップ記事となるかなど)も、基本的には新聞社等の判断に委ねられている。

一方、ウェブサイトの構築以上に運営が簡便なブログは、誰もが情報の発信主体になれる可能性を提供したが、その反面、ブログの情報は正確さが保証されないほか、きわめて個人的な記事の乱立によって情報が錯綜し、情報の重要度がわかりにくくなっている。

両者の断絶を埋める試みの一つが、kizasi.jpであると言える。kizasi.jpでは、毎日約25万のブログの記事の中から関連するキーワードを抽出し、一つの「話題」としてまとめ、ブログでの登場頻度に応じてランキング形式で視覚化している。ランキングは10分ごとに更新され、日・週・月・年ごとのランキングを参照することができるため、1年前の同じ月と比べて「話題」がどう変化したかを比較することも可能となっている。

また、分野ごと(例えば、「映画」「政党」など)に注目されている「話題」のランキングも作成されているほか、任意の語に対してどのような「話題」が語られているかを検索することもできる(例えば、2009年3月において、「感動」という語とともに最も語られた「話題」は、「侍ジャパン」である)など、ブログ記事を活用した多様なサービスが提供されている。

kizasi.jpは、新聞社等のウェブサイトと個人によるブログが抱える、「人々の要求に応じた多様な情報を正確に発信する」という課題に必ずしも応えるものではない。しかし、社会におけるニーズの発掘や、同じ話題に対して存在する、ないしは存在しない、社会における多様な「読み」を把握し、考察することの手助けをしてくれる。


*浅学のため事実誤認などがあればご指摘ください。

2 件のコメント:

  1. 大変興味深い事例紹介をどうもありがとう。

    しらばく前から「アテンション経済」という言葉を耳にしますが、個々人のアテンションではなく、ネットコミュニティの総体のアテンションを拾おうとしているという意味で大変面白いです。

    以下に、関連記事があります。昨日講義で話題に なったビジネスモデルの話題も含めて簡単に紹介されています。

    [集合知を独自に検索して真実を導く、kizasi]
    http://www.atmarkit.co.jp/fnetwork/column/narumono12/01.html

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  2. 事例紹介参考になりました。
    ありがとうございました。アットマーク・アイティのコラムは、昨日お話しした点(マスメディアに引っ張られる〜)見事に指摘していますね。

    同様にこれも後段で指摘している点として、
    「ブログを書いているとき、読まれることを前提に文章を“演出”し、…」と書かれている点も
    気になりました。

    ただし、kizasiにしろ他のサイトにしろ
    レコメンデーションと共に「フォークソノミー」が
    次のスタンダードになるのではと思いました。

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